全国住み放題。「住む+働く」の“新しい日常”拡大中
代表取締役社長 与曽井陽一さん
※ この記事は、日本全国・地域の旬な情報をお届けする雑誌「TURNS」から転載しています。
月々定額制で全国各地に住める。そんな住み放題の多拠点生活プラットフォーム「ADDress」は、個人はもちろん、法人での利用も可能だ。今回はご自分が経営する企業での ADDressの活用に可能性を感じ、千葉県 一宮で多拠点居住をお試し体験した、与曽井さんにお話を伺った。
都心以外の拠点を求めて
「自分だけではなく、社員が気軽に利用できる場になればと思って法人契約しました」
そう語る与曽井陽一さんは、創業15年のソフトウェア開発会社の代表取締役。東京に本社を構えるが、新型コロナウイルスの影響でリモートワークの業務形態を考慮し、地方拠点に関心を高めていた。そんな矢先に知ったのがADDressのサービス。定額料金を払えば全国各地のADDressの家を利用できる。それに敷金や礼金などの初期費用も不要で、光熱費も込み。社員22名にアンケートをとったところ、20~30代の若手単身者を中心に半数以上が「利用したい」という回答だった。
そこで今年7月、法人契約し、翌週にはモニターとして与曽井さんが利用することに。選んだ拠点は、都内から車で約1時間半の距離にある千葉県一宮町の「一宮A邸」。サーファーの聖地であり、別荘地として知られたエリアだ。

「静かで、ゆっくりと時間が流れていて、想像していた以上に快適です。写真とウォーキングが趣味なので、午前中はずっと周辺を散策できて、いい気分転換になりました」と笑う。
A邸は空き家だった木造瓦葺きの平屋を改装したもので、男女別のドミトリーの他に個室もある。広縁やウッドデッキ、広い庭がある他、離れにワークスペースが用意され、人目を気にせず仕事に集中することもできる。


「離れの内装は私たちでやりました。机や椅子も手作りしたんですよ」と語るのはA邸を管理しているの齋藤美千恵さんだ。各拠点には必ず"住み込み"または"通い"で家守がいるのがADDressの特徴で、家の管理や滞在者の相談窓口になっている。家守は物件のオーナーや、地域にネットワークをもつ人が担当しており、齋藤さんは後者。子育て中の女性の働き方を応援する"ママ ライフ バランス"をテーマにした事業をはじめ、地域に根差したマーケティングや雇用、まちおこしなど幅広く活躍する街のキーパーソン的な存在だ。

多角的な経験を活かして、利用者と地域を結び、 ADDress の可能性を広げている

「昨年5月のオープン当初から法人で家守となり、2人で管理しています。家守として主に地域ガイドや利用時の相談役をしていますが、滞在される方々の個々の心地いい距離感を意識して対応するようにしています。ここは、サーファーや写真を撮りに来る方が多かったのですが、最近は20~30代の方たちがテレワーク目的に滞在されるケースが増えてきました。連日満室が続いています」と嬉しそうに語る。
事業マッチングの可能性も大
与曽井さんも、ワーケーションでの活用を念頭に入れているが、さらに「チームビルディング」の場としてADDressの使用を考えているという。
「仕事では接点のない社員同士の交流の場になればと思います。キッチンが広いので一緒に料理をしたり、ワークショップ形式で何かをするのもいいかもしれません」
それを受けて齋藤さんが提案したのが農業体験だ。
「地元の農家さんの人手不足は深刻。繁忙期は短期でも手伝ってくれる人がいると助かります。収穫したものを地元の人と一緒に料理するのもいいですね。地元の人との交流もいろいろご提案できます」
以前も滞在中の女性に、キャンプ場の案内役を紹介した経緯があり、地域雇用のマッチングにも前向きだ。さらに与曽井さんも「Iotを活用して、農業や土木、漁業などの一次産業の効率化を図る事業を手がけています。人手だけではなく、一企業として技術提案することができるかもしれません」と話が広がっていく。
地域貢献と掛け合わせた事業展開ができる可能性を感じ、与曽井さんは千葉だけではなく、関東近郊のADDressもいろいろ体験してみたいと目を輝かせた。




TURNS8月号(vol.42)より転載
文:浜堀晴子
写真:庄司直人